渡し船と新幹線駅近くの流れ

上海市内を流れる蘇州河のうち中環状線から上流は、多くの市民にとって縁遠い存在となる。しかし、そこから先も川は延々と続き、やがて蘇州河(呉淞江)全体の中流域に差し掛かる。その辺りにも興味深いポイントがいくつかある。蘇州河では数少ない渡し船が運航されているエリアと、新幹線(高鉄)の駅に近いエリアを訪ねた。


夕暮れの渡し船。両岸とも上海市だが、西岸をしばらく行くと昆山市になる。背後のマンション群は昆山市の一角だ

のどかに運航される渡し船
 
 上海市西部の広大なエリアを占める青浦区、上海市の西に隣接する昆山市、蘇州河はその境界付近を流れている。その一角に渡し船が運航されている「万獅渡口」がある。地下鉄11号線の終点・花橋駅の南西約3キロの地点だ。この周辺の蘇州河には橋が架かっておらず、人と二輪車を運ぶ渡し船が住民の足となっている。
 渡し船は1隻しかなく、午前6時から午後8時まで川の両岸を結んでいる。この辺りの蘇州河は70メートル前後の川幅があるが、ここだけ急に狭くなり幅は30メートルほどしかない。川はほぼ南北に流れている。東岸は昔ながらの農村で、西岸にはれんが工場がいくつか立っている。
この渡し船に時刻表はない。客がいないときは西岸に停泊し、そこに客が来るか対岸に客が来るかすると係員が船を動かす。周辺の風景と同様になんとものどかな渡し船だ。地元の人しか乗らないといってもいい渡し船なので、係員と客も顔なじみで、対岸で多少待たされても文句を言うような人はいない。料金は人が乗るだけなら片道2元だ。近くに橋を建設する計画があるということで、この渡し船も近い将来廃止される運命にある。時の流れとはいえ、人と人の心も結んでいる渡し船がなくなるのは寂しいことだ。
 
万獅渡口への行き方
地下鉄11号線の終点である花橋駅から「白鶴6路」のバスに乗る。バス停は駅のすぐ下にある。終点の万獅渡路万獅渡口まで行き、バス停から少し引き返し、小さな橋を渡って右に折れると100メートルほどで万獅渡口に着く。


渡し船。1隻で運航している。川幅が狭いので、1分もあれば対岸に着いてしまう


渡し船から見た蘇州河。船が頻繁に行き交っている。小さい渡し船が航路を譲るのがルールになっているようで、船が通るときは渡し船の運航に少し時間がかかる
 

西岸の待合所の表示。「万獅渡口」の文字のほぼ半分が欠け、時の流れを感じさせる
 

西岸の所々に古い街並みがある。蘇州河のそばの街だけに、多くの水路が流れている


東岸は昔ながらの農村だ。稲作とビニールハウスでの野菜栽培が主な産業となっている。稲が実れば田んぼは黄金色になり、収穫の季節を迎える




新幹線で蘇州河の中流へ
 
 蘇州河の中流域は上海からのアクセスが不便な所が多い。その中で最も便利だと思われるのが、新幹線専用の「昆山南駅」の南を流れる蘇州河だ。西から東に向かって蛇行しながら流れる蘇州河の中で、このエリアは最も北に位置している。
 昆山南駅近くの蘇州河は、駅から歩いて行ける距離にある。目印となるのは「南山寺」で、川に面して立っている。しかし、この寺は現在、閉鎖された状態になっているので、寺の境内から川を眺めることはできない。
 橋の上から川を眺めるなら、南山寺の少し下流に架かっている「呉淞江大橋」がいい。この辺りの川幅は約200メートルで、上海の市街地を流れる蘇州河と比べると格段に広い。同じ川の上流とは思えない広さだ。川の北岸は住宅地、南岸は工場群となっている。昆山南駅近くの蘇州河の周辺には、これといった見どころはない。しかし、開発が進む新しいエリアは整然としていて開放的で、蘇州河のスケールも感じられる。
 
昆山南駅近くの蘇州河への行き方
虹橋駅または上海駅から新幹線に乗る。昆山南駅に停車する列車は頻繁に出ている。20分足らずで昆山南駅に到着する。駅の南口から西に向かって歩き、突き当たりの小澞河路を南へ。1.5キロほどで河岸の工場に出る。その中の道をしばらく行くと南山寺に着く。呉淞江大橋に行くには川沿いの道をさらに1.5キロほど行く。「昆山101路」のバスが昆山南駅と花橋駅を結んでいるので、中流の2つのポイントを1日で回ることもできる。


呉淞江大橋から蘇州河の上流を見る。川幅が広く、かなり大きな船も航行している
 

南山寺の近くから見た蘇州河。川の北岸では高層マンションの建設が急ピッチで進められている
 

南山寺の門。残念ながら現在は内部を拝観することができない
 

川岸の所々に船が係留されている。岸で釣り糸を垂れる人の姿も見られる