泗涇鎮

飾らない生活が続く街

地下鉄9号線は、上海市の中心市街地と南西部の松江区を結ぶ交通の大動脈だ。松江へ向かう列車が地下から地上に出るところに泗涇駅がある。この駅名は近くにある「泗涇鎮」に由来する。この古鎮は今もにぎやかな街となっているが、訪れる観光客はそれほど多くない。中国の人たちの飾らない生活を垣間見ることができる街だ。

にぎやかな通りと静かな街並み
 
 松江区には日系企業の工場も数多く立地し、大勢の日本人が地下鉄9号線を利用している。しかし、これといった特徴のない泗涇駅の周辺の街へは行ったことがないという人が多いだろう。
 泗涇鎮は駅の南東約1.5キロの場所にある。この街が現在の名前になったのは元代の中ごろ、それからでも600年を超える歴史がある。古鎮の西側には「古鎮泗涇」と書かれた門があり、その近くには高さが35メートルを超える  七重塔「安方塔」が立っているので、遠くからでも場所はよくわかる。
 門から東に向かってメーンストリートである開江中路が延びている。通りの両側には小さな商店がびっしりと並んでいて、活気にあふれている。ただ、この通りは上海のどこにでもある商店街だといってよく、わざわざ訪れるような特徴はない。通りから少し入った所に、静かな古い街並みが残っている。おすすめはエリアの中央部を南北に走る江達北路、江達南路の周辺で、水路を渡るポイントには石造りの立派な橋である福連橋が架かっている。
 泗涇鎮は観光客を当て込んだ水郷ではない。中国語でいう「老百姓(庶民)」の生活に触れ、昔ながらの人と人のつながりを感じられるのがこの街の持ち味だといえる。


安方塔とその南を流れる水路。塔に登るには3元の入場券が必要となる
 

塔から見下ろす街並み。白い壁と黒い屋根の家が並んでいる

泗涇鎮への行き方
地下鉄9号線の泗涇駅で下車する。古鎮へは歩いても行ける。駅のすぐ東の横港公路を南へ、泗涇公路を東へ泗涇江川路を南へ行けば古鎮の門に着く。2キロほどで歩くと30程度かかる。交通機関はバスの便があまりよくないので、駅からタクシーを利用するのが便利だ。

心穏やかに街歩き
 
 泗涇鎮の見どころは、開江中路の南を東西に流れる水路の周辺の街だ。江達北路を南に行くと福連橋が見えてくる。この橋の上から街の概要が眺められる。このエリアには特に名所と呼べるようなものはないが、通りを歩くだけで生活のにおいが感じられ、なんとなく心が和む。小さな商店や食堂もたくさんあり、ちょっとした買い物や食事もできる。


開江中路のにぎやかな街並み
エリアのメーンストリートである開江中路。通りの両側には、古鎮に似つかわしくない派手な店が並んでいる。このエリアのショッピングの中心地になっていて、若い人たちも大勢やって来る。
 

江達南路の商店街
江達南路の商店街。開江中路とは打って変わって地味な商店街となっている。店の人ものんびりとしていて、通りを歩く人に声を掛けることはほとんどない。江達路は細い路地で、開江中路からの入り口を見落としやすい。
 

福連橋
水路に架かる古い石橋の福連橋。明代後期に建造された。「福が連続する」という縁起のいい名前の橋だ。目立たない場所にあるが、この古鎮の象徴のような存在となっている。
 

福連橋の上から見た古鎮。遠くに高層マンションが見える。周辺では住宅の建設が続いている
 

水路に沿った古い街並み。路地の上に屋根が取り付けられ、廊下のようになっている


泗涇鎮は江南の穀倉地帯の一角に位置している。そのため古くから、さまざまな農産物が収穫され、それを使った料理が育まれてきた。現在の泗涇鎮でここの郷土料理を食べることは難しいが、その名残をとどめる料理を見つけることはできる。古鎮の味を探してみよう。
 

泗涇古鎮粽子
泗涇鎮では19世紀の終わりごろから「広利粽子」という粽子(ちまき)が盛んに食べられていた。福連橋のたもとに「泗涇古鎮粽子」と称する粽子の店がある。広利粽子とは異なるが、肉入りや卵の黄身入りなどがあり、1個4元から6元と気軽に食べられる値段だ。